こんにちは。三鷹・武蔵境・小金井・調布エリアで診察を行う、三鷹アニウェル動物病院です。今日のコラムは、『尿検査』についてです。尿検査で分かることはたくさんあります。愛犬・愛猫の健康を守るためにも、定期的な健康診断をおすすめいたします。今日は、その中でも尿検査に焦点を当てて解説いたします。【参考コラム】おうちで出来る!犬・猫の採尿方法についてはじめに「うちの子は元気そうだから大丈夫」「おしっこは毎日出ているから問題ない」と思っている飼い主さんも多いのではないでしょうか?実は犬や猫の尿は、見た目ではわからない体のSOSを静かに発信しています。このコラムでは、尿検査の各項目が何を教えてくれるのかをわかりやすく解説していきます。ぜひ、検査の結果を読み解く手がかりにしてみてください。尿検査が必要な理由とその重要性尿検査は動物たちの健康状態を把握するために非常に重要で、心身への負担が少ない優れた検査です。特に、泌尿器系(腎臓、尿管、膀胱、尿道)の異常を早期に発見するために欠かせません。しかし、尿検査でわかるのはそれだけではありません。尿は全身の健康状態を反映するため、泌尿器系以外の病気、例えば糖尿病や肝臓・胆道系の異常、内分泌疾患(ホルモン系の病気)などの潜在的な健康問題を早期に発見する手がかりにもなります。尿検査が必要な主な理由泌尿器系の病気の早期発見: 膀胱炎、尿路結石(腎臓、尿管、膀胱、尿道)、腎不全などの泌尿器系の病気は、尿検査で初期段階から異常が検出されることがあります。糖尿病の診断・管理: 尿中にブドウ糖(尿糖)が検出されるかどうかは、糖尿病の有力な手がかりとなります。脱水や腎機能の評価: 尿の濃さ(尿比重)を調べることで、脱水状態の有無や、腎臓が尿を濃縮する能力(腎機能)を評価できます。全身の炎症や感染症の確認: 尿中に白血球や細菌、タンパク質が検出されることで、全身の炎症や感染症の有無を知る手がかりになります。特に、慢性腎臓病(CKD)は高齢の猫に非常に多く、2020年の調査では泌尿器系の疾患が猫の死亡原因の第一位となっています⁽¹⁾。尿検査は腎臓の機能低下を血液検査よりも早く察知できる重要な手がかりであり、尿路結石や特発性膀胱炎などの泌尿器疾患の診断にも不可欠です。(1)動物病院カルテデータをもとにした日本の犬と猫の寿命と死亡原因分析 日獣会誌 75 e128~e133(2022) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvma/75/6/75_e128/_pdf/-char/ja尿検査の主要項目からわかること尿検査では、見た目の色や濁り、においの確認のほか、様々な専門的な検査が行われます。ここでは、特に重要な4つの項目について解説します。① 尿試験紙検査試験紙に尿をつけて色の変化をみる検査です。短時間で多くの情報を得ることができます。検査項目結果からわかること詳細潜血尿の中に血の成分が混ざっていないか肉眼で見えない血液の成分(赤血球やヘモグロビン)を検出します。膀胱炎、尿路結石、腫瘍などの出血のサインです。ケトン体体がエネルギー源をどう使っているか糖の代わりに脂肪を燃やした時に作られます。検出された場合、重度の糖尿病や深刻な絶食・飢餓状態の可能性があります。ビリルビン肝臓や胆道の働きに異常がないか肝臓で処理される色素です。検出されると、肝臓・胆道の異常や溶血性疾患(赤血球が壊れる病気)が疑われます。特に猫では健康な状態ではまず検出されることはないため、わずかな陽性でも注意が必要です(犬では健康でも少量検出されることがあります)。ウロビリノーゲン肝臓や胆管、赤血球の異常の可能性肝疾患、胆管の異常、または溶血性疾患の可能性が疑われます。犬や猫では結果の信頼性が低いため、血液検査や画像検査など他の検査と組み合わせて総合的に判断します。タンパク質腎臓や尿の通り道(尿路)に異常がないか健康な尿にはタンパク質はほとんど出ません。検出されると、腎臓病や膀胱炎などの尿路の炎症・出血が疑われます。ブドウ糖体の中で糖の処理がうまくできているか血液中の糖分が高すぎると、腎臓で再吸収しきれず尿に漏れます。検出された場合、糖尿病の可能性が非常に高いです。pH尿の酸性度・アルカリ性度の状態尿が酸性かアルカリ性かを示し、尿中に結石(ストルバイト、シュウ酸カルシウムなど)ができやすい環境かどうかを判断する参考になります。② 尿比重(USG:Urinary Specific Gravity)尿の濃さ(比重)を測定することで、「腎臓が尿を濃縮する能力」を評価します。初期の腎臓病は、血液検査に異常が出るより早く尿比重の低下として現れることが多いため、早期発見に非常に重要な検査です。検査結果考えられること詳細低い(薄すぎる尿)腎機能の低下やホルモン異常腎臓が尿を濃縮する機能が低下している(腎不全初期など)、または多飲多尿を伴う病気(糖尿病、ホルモン系の病気など)の可能性が考えられます。高い(濃すぎる尿)脱水や結石のリスク尿が濃すぎる場合、体が脱水しているか、水分摂取量が少ない可能性があります。また、尿が濃いと尿路結石ができやすくなります。③ 尿沈渣の観察(顕微鏡検査)尿を遠心分離機にかけ、沈殿した細胞や結晶などを顕微鏡で直接観察する検査です。肉眼では見えない異常を発見できます。観察されるもの結果からわかること詳細結晶尿路結石ができる可能性尿中に含まれるミネラルの塊(結晶)を見つけます。結晶の種類(ストルバイト、シュウ酸カルシウムなど)によって、食事療法や治療法が異なります。細菌尿路に細菌感染があるか尿中に細菌が見つかると、膀胱炎や腎盂腎炎などの尿路感染症が強く疑われます。白血球も同時に見られることが多いです。白血球(膿)尿路や生殖器に炎症があるか白血球は、炎症や感染が起きている場所に集まる細胞です。多数検出された場合、膀胱炎や腎盂腎炎などの炎症が起きていることを示します。赤血球尿路からの出血の有無尿路のどこかで出血していることを示します。膀胱炎、結石、腫瘍などの病気が原因として考えられます。円柱腎臓の尿細管のダメージ腎臓の尿細管で作られる成分です。検出されると、尿細管に何らかのダメージや障害が起きている可能性を示します。④UPC( 尿タンパク/クレアチニン比)尿中のタンパク質とクレアチニン(老廃物)の比率を測る検査です。尿比重や飲水量の影響を受けにくく、腎臓からどれくらいタンパク質が持続的に漏れ出ているかを正確に評価できます。検査結果考えられること詳細高値慢性腎臓病の重要な指標UPCが高いほど、腎臓のろ過機能(糸球体)に異常があり、本来再吸収されるべきタンパク質が大量に失われていることを示します。これは慢性腎臓病の進行度を評価する上で非常に重要な数値です。タンパク質の漏出を抑える治療を行うことで、腎臓病の進行を遅らせることが期待できます。定期的な尿検査で、愛する家族の健康を守りましょう!尿検査は、動物たちの健康状態を把握し、病気の早期発見・早期治療に結びつく、非常に重要な検査です。普段から「水を飲む量やおしっこの量が急に増えていないか」「おしっこの色がおかしい、またはトイレで力んでいる様子はないか」といったサインを見逃さないことが、飼い主さんができる最良の早期発見です。もし少しでも気になる変化があれば、ためらわずに動物病院にご相談ください。(参考コラム)愛犬・愛猫のおしっこの色と量でわかること大切なサインを見逃さないで!愛犬・愛猫の飲水量チェックおうちで出来る!犬・猫の採尿方法について三鷹アニウェル動物病院での健康診断について当院では、犬や猫の定期的な健康診断を推奨しています。特に症状がない状態であっても年に1回、7歳以上のシニア期にはいると年に2回程度の実施をおすすめいたします。当院では、2025年11月30日(日)まで「秋の健康診断キャンペーン」を実施しております。この機会に尿検査を受けてみてはいかがでしょうか。キャンペーンについて秋の健康診断キャンペーン