こんにちは。三鷹・武蔵境・小金井・調布エリアで診察を行う、三鷹アニウェル動物病院です。今日のコラムは、『犬の心臓病「僧帽弁閉鎖不全症」について』についてです。心臓病は、人間の死因としても2番目に多い疾患です。犬も同じで、ガンについで2番目に多い約17%が心臓病で亡くなると言われています。そんな心臓病の中でも、もっとも発症率の高いとされるのが「僧帽弁閉鎖不全症」です。今回のコラムでは、その症状や見られやすいサインなどを解説していきます。まずお伝えしたいこと犬の心臓病は、年をとるにつれて増えてくる病気のひとつです。ただし、早めに気づいて治療や生活管理を始めることで、長く元気に過ごすことができます。「心臓の病気=すぐに命に関わる」と思われがちですが、そうではありません。定期的な健康チェックと日々の観察がとても大切です。心臓病の発症率は、高齢犬になればなるほど上がっていきます。2014年のペット保険会社のデータによると、5歳では全疾患の1〜2%程度が心臓病に起因する治療だったのが、10歳を超えると10%以上、12歳では20%近くに跳ね上がります。つまり、12歳の高齢犬は、5匹に1匹は心臓病で通院しているとも言えます。適切な診断と早期発見、早期治療、そして日常ケアで愛犬の寿命や生活の質を支えることができますので、まずは今回のテーマである「僧帽弁閉鎖不全症」への理解を深めていただけたらと思います。心臓には4つの弁があります心臓には、血液を一方向に流すための4つの弁(べん)があります。その中でもトラブルが起こりやすいのが、左側にある僧帽弁(そうぼうべん)です。この弁の病気が、犬の心臓病の中で最も多いといわれています。「僧帽弁閉鎖不全症」とは?犬の心臓病の中でも発症率が高いとされているのが「僧帽弁閉鎖不全症」です。犬の心臓は人間の心臓と同じく、右心房、右心室、左心房、左心室とう4つの部屋で構成されており、常に血液は同じ方向に流れていくのが正常な状態です。僧帽弁は、心臓の左側で血液が逆流しないようにする“とびら”のような働きをしています。この弁が年齢とともに変化してしっかり閉まらなくなると、血液が逆流してしまうことがあります。これが僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)です。犬は特に僧帽弁の閉鎖不全になりやすく、加齢とともに僧帽弁が変性してしまうことが原因としてあげられます。特に小型犬に多く、チワワ、トイプードル、マルチーズ、ポメラニアン、シーズー、ミニチュアダックス、キャバリアは遺伝的に発症しやすいと言われています。どうやって発見するのか?初期のうちは、見た目の症状がほとんどありません。多くは、定期健診で聴診したときに「心雑音」が聞こえて見つかるケースです。雑音が確認された場合には、より詳しく調べるために心エコー(超音波)検査やレントゲン検査を行うことが多いです。また、健康診断の血液検査で、心臓の状態をみる項目(バイオマーカー)を取り入れることもあります。ご家庭でも、呼吸の速さやリズムのちょっとした変化に気づくことがあるかもしれません。「以前より息が速い」「寝ているときに呼吸が浅い・苦しそう」と感じたら、早めにご相談ください。どんな症状がでるの?初期:あまり症状がなく、少し疲れやすくなる程度中期:運動や興奮のあとに咳が出る、散歩を嫌がる、食欲が落ちる進行すると:安静にしていても呼吸が速い、夜中に落ち着かない、倒れるような仕草を見せる初期は、「散歩の途中で座り込む」「寝ている時間が長くなる」といった程度で、飼い主様も気づきにくいでしょう。実際、このような初期症状は心臓病でなくても加齢と共に起きやすい事象ですので、気が付くのはなかなか難しいです。中期になると、「運動後や興奮すると咳をしがち」「散歩に行きたがらない」「食欲が落ちる」などがみられるようになります。このあたりから、飼い主様も愛犬の変化に違和感を覚え、動物病院へ相談をされるケースが増えていきます。さらに進行すると、「呼吸が苦しそう」「ほとんど動こうとしない」「安静時も呼吸が早い/咳が出る」「突然パタンと倒れる」などの症状が起こるのです。心臓病でも咳が出ないこともありますし、咳が出たからといってすぐに心臓病とも限りません。ただし、咳が続くほか、寝ているときの呼吸数が増えたり(1分間に30回を超えるなど)、息づかいがいつもと違う場合には、心臓の働きが弱ってきているサイン(心不全の兆候)のことがあります。この段階では重い状態に近づいていることも多いため、早めの受診が大切です。進行すると肺水腫を起こすことも僧帽弁閉鎖不全症が進行すると、どんな症状が起きるのでしょうか。病気が進むと、心臓の中に血液がたまりやすくなり、肺に負担がかかります。その結果、肺の中に血液中の水分がしみ出してしまい、肺水腫(はいすいしゅ)という状態になることがあります。肺に水分がたまると、呼吸が速くなる・苦しそうに見えるなどの症状が出て、命に関わることもあるため、早めの対応がとても大切です。僧帽弁閉鎖不全症を発症しやすい犬種日本で人気の小型犬は、循環器の病気にかかりやすい傾向にあると言えます。特に、チワワ、トイプードル、マルチーズ、ポメラニアン、シーズー、ミニチュアダックスフンド、キャバリアなどは、僧帽弁閉鎖不全症を発症しやすいという研究結果が出ています。早期発見が何よりも大切ですどれだけ日頃から気をつけて生活をしていても、僧帽弁閉鎖不全症は遺伝性の要素も強いため完全に防ぐことは難しい病気です。しかし、僧帽弁閉鎖不全症は、早期発見と早めの治療で、進行をゆるやかにすることができます。定期健診(聴診)でのチェック必要に応じた心エコー・レントゲン・血液検査日ごろの体調観察(息づかい・食欲・元気の様子)体重や食事、運動量の管理症状が出てから検査をするのではなく、健康だと思えている時からしっかりと検査をすることが愛犬の命を救う上で大切です。三鷹アニウェル動物病院での検査・治療について三鷹アニウェル動物病院では、定期健診での聴診を基本に、必要に応じて心エコー・レントゲン・血液検査を行っています。病気が見つかった場合は、症状の段階に合わせてお薬で心臓の負担を減らす治療を行い、生活の工夫やご家庭でのケアも一緒にサポートします。手術が必要なほど進行した場合は、高度な心臓手術を行っている専門施設へのご紹介も可能です。若いうちから定期健診を行い、早期発見することによって、その子やご家族にとっての最適な治療方針を共に考えていけたらと思います。