「フィラリア症」と聞くと、犬の病気というイメージを持たれる方も多いかと思いますが、実は猫にもフィラリア症は感染します。猫の場合、犬ほど感染数は多くありませんが、いざ感染すると重い症状や突然死を起こすこともある、油断できない病気です。本コラムでは、そんな猫ちゃんのフィラリア症について、原因や症状、検査方法、予防法についてお話しいたします。◆猫フィラリア症とは?フィラリアは「犬糸状虫」という寄生虫で、蚊に刺されることで感染します。心臓や肺の血管に寄生し、命にかかわる病気を引き起こすことがあります。「犬糸状虫」という寄生虫の名前が付くくらいですから、 『フィラリア=犬の病気』 と思われがちですが、猫も感染することがある病気です。しかも、猫の場合は、フィラリア(犬糸状虫)が体内に1匹いるだけでも、重い症状が出たり突然死につながることがあるため、十分に注意が必要です。もし、猫が蚊に刺されたことで体内にフィラリアが入りこんだとしても、そのフィラリアは成虫になる前に死んでしまうことが多いと言われています。しかし、その「死んだフィラリア」が検査での発見を難しくしたり、病気を引き起こしたりと厄介なのです。◆猫フィラリア症の症状について前述のとおり、猫が蚊に刺されたことで体内にフィラリアが入りこんだとしても、そのフィラリアは成虫になる前に死んでしまうことが多いです。しかし、その死んだフィラリアが猫の肺の中で強い炎症を起こし、最悪の場合には突然死を引き起こすこともあります。咳や呼吸困難嘔吐や元気消失突然死につながることもある◆猫フィラリア症の治療法について猫フィラリア症の場合、犬フィラリア症の治療に一般的に使用される「フィラリアの成虫を駆虫するお薬(メラルソミン)」が使用できません。それは、猫フィラリア症の場合、そもそも成虫にならないケースが多数であり、成虫を駆虫するお薬が効かないこともありますし、死んだフィラリアが猫の肺の中で強い炎症を起こすことがあるためです。内科的療法:症状にあわせて、酸素投与・ステロイド・抗炎症薬などを使用することで症状の管理と緩和を行います。感染が確定した場合や感染が疑われる場合、成虫を殺さずに幼虫を駆除するための予防薬(イベルメクチンなど)を使用することがあります。外科的療法:重度の症状かとフィラリア成虫の存在が可能性が著しく高いと判定された場合、手術による成虫の除去が選択肢となることがあります。但し、リスクは高いため慎重な判断が必要になります。猫フィラリア症には、こうしたリスクがあるため、犬以上に予防が重要とされている病気のひとつです。◆猫フィラリア症の検査方法犬では、体内の雌のフィラリア成虫が出す抗原(たんぱく質)を調べる「抗原検査」で感染の有無を調べます。ですが猫の場合は…そもそも体内で成虫にまで育たないことが多い成虫になっても数匹と少なく、フィラリアがオスのみの感染もあるそのため、犬と同じ抗原検査だけでは感染を見逃してしまう可能性があるのです。猫の検査は「複数の方法を組み合わせて」行います猫のフィラリア症は見つけにくい病気です。そのため、以下のような方法を組み合わせて検査します。抗原検査:雌の成虫がいる場合に反応抗体検査:フィラリアに感染した形跡があるかをチェックレントゲン検査や心エコー検査:肺や心臓の状態を調べ、感染のサインがないか確認します血液検査:炎症の有無など全身の状態を把握します◆予防方法について猫フィラリア症は、「月1回のお薬」で予防が可能です。月に1回のケアで、フィラリアだけでなく、ノミやマダニ、耳ダニ、おなかの虫(回虫や鉤虫)などもまとめて予防することができるオールインワンタイプの薬もありますので、ぜひご相談ください。おうちの中で暮らしている猫でも、蚊が1匹入ってくるだけで感染してしまうことがあります。「外に出さないから安心」と思われることもありますが、蚊は網戸のすき間や玄関の開け閉めなど、ふとしたタイミングで室内に入り込むことがあります。また、ノミやマダニは、人の衣服や荷物に付着して家の中に入り込むケースもあるため注意が必要です。実際、外に出ていない猫でもフィラリアやノミ・マダニに感染するケースは少なくありません。こうした背景をふまえて、複数の予防を一度にできる 『オールインワンタイプ』 のお薬は、忙しい日々の中でも猫をしっかり守ってくれる頼もしい選択肢のひとつです。繰り返しになりますが、フィラリア症は治療が難しいため、予防で守ってあげることがとても大切です。