動物病院から処方されたお薬をご自宅で飲ませるときに、「お薬を飲ませるのがむずかしい…」と感じたことはありませんか?犬や猫などはお薬のにおいや味に敏感です。人間では気が付かないような些細な変化にもよく気が付きます。しっかりとお薬を飲んでもらうために、ちょっとした工夫で上手くいくこともあります。今回は、お薬のタイプごとにおすすめの投薬の方法をご紹介していきます。◎錠剤・カプセルの飲ませ方直接口の中に入れるお薬を利き手に持ち、もう一方の手で上あごをやさしく持ち上げます。下あごを軽く開き、舌の奥にお薬を入れすばやく口を閉じたら、そのまま軽く上を向かせ、飲み込むまで待ちます。薬を入れる位置が手前すぎると舌で押し出されてしまいますが、奥に入れすぎると嘔吐反射でえずいてしまうため、口を開けて見える喉奥あたりに入れてください。以下の写真の「〇の位置」が適切な場所です。【👉コツ】上を向かせたまま喉を優しくさすってあげると、飲み込みを促すことができます喉を「ごくん」と動かすのを確認してから手を離すようにしてください指を噛まれそうな場合や、舌の奥に届かない場合は、ピルガンを使用することで安全かつスムーズに投薬できます参照:Bartram ピルガン ペット薬用品 投薬器フードやおやつに混ぜる少量のおやつやフードに混ぜて与えてください。柔らかいフードやおやつと一緒に与える場合は、完全に包み込むと気づかれにくく、スムーズに飲ませることができます。必ず薬を飲んだことを確認してください。【👉コツ】食事の一番最初に与えると、空腹感から食いつきがよくなります※お薬によっては投薬のタイミングが指定されているものもありますので、まずは獣医師にご相談ください匂いの強いもの(ペースト状のおやつやお肉など)や、甘みの強いもの(さつまいもやかぼちゃ、甘い野菜など)と混ぜると気づかれにくいです投薬補助用の商品を使う飲み合わせが心配な場合や、普段ドライフードのみをあげていてお薬を隠せない場合は、投薬補助用商品を使う方法もあります。薬の形状や匂いがわかりにくくなることで飲みやすくなります。※一般的な投薬補助おやつには、鶏肉、牛肉、小麦、卵、乳製品などのアレルゲンが含まれていることがあります。成分表示をご確認のうえ、使用してください。参照:ロイヤルカナン ベッツホームデリバリー 犬用 ピルアシスト◎粉末・液剤(シロップ)の飲ませ方フードやおやつに混ぜる少量のフードやおやつに、少しずつ混ぜて与えてください。食べ残しがあるとお薬の量が足りなくなってしまうため、少量から始め、食べきったことを確認してから残りも与えるようにしてください。【👉コツ】食事の一番最初に与えると、空腹感から食いつきがよくなります※お薬によっては投薬のタイミングが指定されているものもありますので、まずは獣医師にご相談ください匂いの強いもの(ペースト状のおやつやお肉など)や、甘みの強いもの(さつまいもやかぼちゃ、甘い野菜など)と混ぜると気づかれにくいですシリンジやスポイトを使う少量の水で溶かした粉末や液剤を、針のついていない注射器(シリンジ)やスポイトで吸い上げます。動物の頭を少し上に向けて固定し、口角のあたりからシリンジやスポイトを差し込みます。薬液を少量ずつ、ゆっくりと注入してください。一気に注入するとむせてしまったり、誤嚥(気管に入ってしまうこと)の原因になります。しっかりと飲み込んだのを確認してから、また少量ずつ飲ませるようにしてください。【👉コツ】シリンジやスポイトを差し込む位置が前過ぎると口からこぼれてしまうため、犬歯よりも後ろに横から差し込むと飲ませやすくなりますペースト状にして上あごに塗り付ける粉薬をごく少量のお水もしくは液状のおやつで溶き、ペースト状にします。ペースト状にしたお薬を清潔にした利き手の指に取り、もう一方の手で上あごをやさしく持ち上げます。下あごを軽く開き、上あごの手前のほうにお薬を塗り付けます。喉の奥に付着すると誤嚥の可能性が高まるため、奥に入れすぎないよう注意してください。こちらはしっかりと塗り付けられれば吐き出されにくい方法ですが、口内に残りやすく、お薬の苦みを感じやすいため嫌がる可能性が高い方法です。【👉コツ】歯磨き粉やマヨネーズくらいの、粘り気のあるペースト状になるのが理想ですお薬を塗り付けたら、シリンジでお水を飲ませてあげてください◎投薬を成功させるための大切なポイント1.獣医師の指示を必ず守る薬の量、回数、期間を守ることは、病気の治療に不可欠です。自己判断で薬を中断したり、量を変更したりすると、病気が悪化したり、薬が効きにくくなったりする原因になります。錠剤を砕いたり、カプセルの中身を出したりするなど、形状を変えると作用に影響する場合がありますので、獣医師にご相談のうえ、行うようにしてください。2.焦らず、優しく接する動物は飼い主さんの気持ちにとても敏感です。焦ったりイライラしたりすると、動物も緊張して投薬を嫌がってしまいます。落ち着いて、優しく話しかけながら行いましょう。3.褒めて、ご褒美をあげるお薬を飲ませることができたら、たくさん褒めてあげたり、好きなおやつや遊びでご褒美をあげたりしましょう。「お薬=嫌なこと」というイメージを和らげ、次の投薬への抵抗を減らすことができます。4.無理強いはしないどうしても嫌がってしまったり、暴れてしまう場合は、無理強いは避けてください。動物に強いストレスを与えてしまい、飼い主さんとの信頼関係を損なう可能性があります。うまくいかない時は、お気軽に当院へご相談ください。別の方法を一緒に考えましょう。5.薬の保管に注意お薬は指示された方法(冷蔵保存など)で保管し、お子さんや同居の動物たちが誤って口にしないよう、手の届かない安全な場所にしまいましょう。6.上手に飲ませられなかった場合は錠剤のお薬を何度も口に入れなおすと溶けてなくなってしまったり、お薬を溶かしたおやつを少し食べたけど残してしまったりなど、上手く投薬できないこともあるかと思います。そんな時は、焦ってお薬を追加したりすることなく、まずは病院へご相談ください。7.異常があればすぐにご連絡をお薬を飲ませた後に、嘔吐、下痢、元気がない、痒がるなどの普段と違う様子が見られたら、すぐに病院へご連絡ください。◎お薬の時間が、嫌な思い出にならないようにできるだけスムーズに、そして安心して与えられる方法を知っておくことは、飼い主さんにもペットにも優しいことです。お互いにストレスにならず、投薬を続けていける方法を見つけていきましょう。困ったときは、どうぞお気軽にご相談ください。今回協力してくれた子:マシュレク君とってもかわいくて、好奇心旺盛なエアデール・テリアの3歳の男の子です。いつも元気で、当院に来てくれるといつも全員を明るくしてくれます!