ノンレスポンダーとは?感染症から犬や猫を守るために行う役割がワクチン接種にはあります。しかし、ごく一部の犬や猫には、「ノンレスポンダー(non-responderワクチン非応答性)」と呼ばれる体質の子がおり、ワクチンを正しく接種しても十分な免疫(抗体)がつかない体質の子を指します。ノンレスポンダー自体は、すぐに犬や猫の健康を害するわけではありません。しかし、ワクチン接種をしても予防が出来ない(感染症に打ち勝つ抗体が出来ない)ということは、感染症にかかるリスクは残ってしまいますので、飼い主さんがこうした子のための環境を管理してあげることが重要です。また、免疫不全の可能性も考えられるので、治療が必要となってきます。もし、自分の犬や猫がノンレスポンダーであった場合に、どういった対応をすべきなのかを考えていきましょう。なぜ、免疫がつかないの?ノンレスポンダーになる理由はさまざまですが、主に次のようなことが考えられています。遺伝的な問題免疫の「記憶」を作る働きが弱い体質のため、ワクチンを異物として正しく認識できないことがあります。移行抗体の干渉が長く続いていた初回のワクチンシリーズの時期が早すぎると、母親からもらった移行j抗体によってワクチンが無効化される場合があります。この場合は、あくまでもワクチン接種の時期が早すぎたことが原因であるため、真のノンレスポンダーではありません。時間が解決しますので、心配しなくても大丈夫です。免疫系に何らかの障害がある(先天性または病気による免疫不全)特に重度の免疫不全の場合は、ワクチンの反応が極めて弱くなることがあります。「ノンレスポンダー」は、どのくらいの確立で起きるの?犬で最もよく知られているのは、イヌパルボウイルス(CPV)に対するノンレスポンダーです。これはごく一部の犬にみられ、ワクチンを何度接種しても抗体がつかない体質を指します。報告では、発生率は約0.05~0.1%程度とされており、柴犬・ロットワイラー・ラブラドールレトリバーなどで比較的多く見られる傾向があります1. Day MJ. et al.( 2016) 2. Schultz RD.et al. (2006) *3. Yamamoto H, et al. (2013)どうやって判定するのか?ノンレスポンダーか否かを判定するには、「抗体検査」を行う必要があります。抗体検査とは、少量の血液を採取してその時点での免疫力(抗体の有無や量)を調べる方法です。検査で十分な抗体があることが確認できれば、追加接種の必要はないと判断されます。ただし、抗体検査で確認できるはコアワクチンのみですのでご注意ください。※コアワクチンについては、こちらの記事をご参照ください。ノンレスポンダーだった場合、どう対応すればいいの?何度ワクチンを接種しても抗体が確認されない場合は、「ノンレスポンダー(ワクチンに反応しにくい体質)」の可能性が考えられます。ノンレスポンダーであることを確定するのは難しいとされていますが、体内に十分な免疫がついていない可能性があるため、感染症にかかるリスクは残ります。そのため、こうした子たちには、①外出を控えること、②ほかの動物との接触を避けることなど、感染予防のための環境管理がとても重要です。WSAVAガイドラインでは、『ノンレスポンダー』を想定して、初回ワクチンシリーズの最終ワクチンを16週齢以降に打つことと、その6-12か月後にブースター接種を行うことを推奨をしています。このブースター接種によって、初回シリーズで免疫がうまくつかなかった子でも、改めてしっかりと免疫を獲得できることが多いと報告されています*1。*1. Day MJ. et al.( 2016)